2021.11.15 /
第82回:匠の技と仕事のマニュアル
以前、渡邊工務店の現場監督と仕事のマニュアルの話をしたことがありました。
若手の社員は施工現場の仕事について、手順や現場の収まりに明確なルール化をして、経験や個人の知識にかかわらず間違いのないマニュアルを作って進めていきます。
速やかな技術の習得に努め、早く一人前の仕事を任せてもらえるようになりたいと話していました。
また、ベテランの監督や渡邊工務店の匠の技と天然木を扱う大工や職人の仕事は、それぞれの現場や、材料ごとに微妙に異なります。
渡邊工務店の現場管理の仕事はマニュアルだけでどこでも同じようにできるものではありません。
そこが分からないようでは本物の現場監督ではないし、大工や職人とも本音のやり取りをできないと言っていたように思います。
どちらも真面目で真剣に仕事に向き合っているからこその話だと思います。
現代の一般的な建築現場ではプレハブ住宅(プレファブリケーション住宅:多くの部分を工場で部材生産、加工し、組立を行っておく工法で建てられた住宅)や、ローコスト系ビルダー(リーズナブルな価格を前面に打ち出した規格形注文住宅供給業者)のように徹底的に無駄を排除し、効率を重視して作成された均一な施工マニュアルに従って組み立てれば住宅が完成する工業製品のような作り方が多くなっているように思います。
住宅より価格の低いお寿司などの料理や洋服、家具や自動車でさえも徹底的に効率化を目的として標準化した商品から、匠の技や情緒的(じょうちょてき:人間の感情の変化を表す)な価値観を重視した商品があります。
渡邊工務店は住宅を生涯で一番高額で一度きりの購入商品と考えています。
お求めやすい価格は大切にしていますが、匠の技や情緒的な価値観を重視しているように思います。
渡邊工務店には、先ほどの若い社員の希望とベテランの監督の想いを両立させるための仕組みがあります。
それは「出来映え検査」という制度です。
渡邊工務店のナレッジ・マネージメント(暗黙知と言われる言語化・数値化できない個人のノウハウを、形式知といわれる言語化・数値化して社員で共有する経営管理)の一環として大切に継続しています。
渡邊工務店は施工管理のシステムとして建築現場の各種検査を他社同様行っています。
それとは別に渡邊工務店独自の制度として、弊社で匠の技を最も理解し、天然木に造詣の深い(ぞうけいのふかい:特定の分野に深い知識や技量を持ち、非常に精通していること)社長の渡辺が、原則として全棟の完成現場を施工担当者、設計、営業、部門責任者と共に実査し、匠の技や114年に渡る渡邊工務店の家造りの想いがどのように現場に反映されているかを確認しています。
気になるところがあればその場で指示を出して手を加え、良かったところは施工図面に記録し写真を撮り、社内の電子掲示板で全社員が回覧できるようにしています。
また、新たな課題があれば、工事会議や設計会議で更に深堀りして全現場に横展開(広げていく)できるように工夫しています。
このように暗黙知(主観的で言語化できない知識)である匠の技や想いを、形式知(誰が見ても理解できるような形式で表現された客観的な知識)である技術のマニュアルへ変化させていくことに渡邊工務店独自の「出来映え検査」制度は貢献(役立つように尽力すること)していると思います。
他の会社と検討されているときは、是非比較していただきたい住宅の品質に関わる大切なことだと考えております。