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2023.08.24 /
第105回:バーチャルウォーターと東濃桧
日本の水は世界の中でも非常に水質が良く、水量ともに安心・安定した水供給がなされています。 雨が豊富で川が豊かなので水のストレスと縁がないように感じられます。 しかしながら、日本は、食料輸入などを通じて多くの世界の水を消費している国です。 丸太や木材、農産物などの生産に水を必要とする物資を輸入している国(消費国)において、仮にその物資を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定した水の量をバーチャルウォーターといいます。 例として環境省によると、1kgのトウモロコシを生産するために必要な灌漑(かんがい:田畑に必要な水を引き、土地を潤すこと)用水は1,800リットルです。また、牛はこうした穀物を大量に消費しながら育つため、牛肉1kg を生産するには、その約20,000 倍もの水が必要です。 2005年に海外から日本に輸入されたバーチャルウォーター量は約800億㎥であり、その大半は食料に起因しています。これは、日本国内で使用される生活用水、工業用水、農業用水をあわせた年間の総取水量と同程度となっています。 農産物の輸入は、同時にそれを育てた灌漑用水をも輸入していることになり、私たちの社会は外国の土壌や水資源を使用して、生活を享受していることになります。 サトウキビなど製品によっては水不足にひんしている乾燥地帯からの輸入もあり、途上国の木材なども伐採を通じて、自覚することもなくその国の乏しい水状況や環境を悪化させているのかも知れません。 また、旺盛な農産物や木材などの輸入は、日本国内の米などの自国産の消費量の激減につながり、自国の農地や森林の衰退や荒廃にもつながり、その産業自体の衰退を引き起こし、その仕事に携わる人々の雇用や維持されていた自然環境の破壊など様々な問題を引き起こす潜在的な要因となる恐れがあります。 環境白書 環境省編平成22年版 環境・循環型社会・生物多様性白書(PDF版)P112 渡邊工務店の東濃桧に対するこだわりは、建築材としてのすばらしさだけでなく、環境・循環型・生物多様性の考え方からも大切にしたい信条です。 東濃桧の森を守るということは森林資源の活用だけでなく、川上の森が持つ保水の能力が天然のダムとして地域の治水に貢献し、岐阜県東濃地方の林業に携わる人々の雇用を守り、東海エリアの地産地消の良質な木材を供給し、バーチャルウォーター課題の解決に寄与し、東濃桧の特性を理解した大工や職人の技術の伝承を守り続けることに貢献します。 東濃桧などの森林資源の森は植樹してから100年の森に育つまで間伐の作業を要します。 間伐とは、森林の成長に応じて樹木の一部を伐採し、過密となった林内密度を調整する作業です。 間伐を行うと、光が地表に届くようになり、下層植生の発達が促進され森林の持つ多面的機能が増進します。 間伐を行わず過密なままにすると、樹木はお互いの成長を阻害し、形質不良になります。 また、残った樹木が健全に成長することにより木材の価値も高まるため、間伐は大変重要な作業となります。 良質な東濃桧が育つには十分な日光と栄養と時間が必要です。 森林の間伐作業は植樹して間もない小径木の頃から、70年くらいに至るまで継続される作業です。 森に光を入れ、東濃桧が健やかに育つために太い東濃桧も間伐していく為、間伐材も立派な東濃桧の柱として活用されます。 下の東濃桧の丸太写真は直径30㎝の30年物の間伐材です。 写真では判りにくいですが年輪の幅が5mm以下です。 私は実際にこの丸太の年輪を一つずつ数えてみましたが、およそ30の年輪を数えました。 東濃桧は冬の寒さも厳しく高地にあるので他の産地の桧より年輪の幅が狭く、意匠性や材質において高品質の桧になります。 また、東濃桧間伐材の小径木は土木工事の杭やバイオマスの材料とされます。間伐をしても無駄にするところはありません。 渡邊工務店は東濃桧を東白川製材協同組合から直接仕入れ、情報交換を行い、その品質管理は自社責任体制で行っています。 東濃桧に係る林業全般に関心を持ち、バーチャルウォーターを始めとした社会の課題解決に向き合っています。 プレカット工場から入る木材を見ているだけの会社では、判りづらいストーリーですね。 機会があれば皆さまにも東濃桧の森を体感頂ければ幸いです。 ■SDGsの取り組みについて詳しくはこちら ■渡邊工務店の家造りについて詳しくはこちら ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら -
2023.08.03 /
第104回:お盆と仏壇と供養
8月は夏休みやお盆に帰省するご家族や、親戚を迎え、にぎやかに過ごすご家族も多いと思います。 年に一度顔を合わせる親戚や友人とも会えて楽しみな季節です。 お盆にはご先祖様のお墓参りをしますが、一般的にはそのお寺のご本尊にお参りしご先祖さまへの供養をすると思います。 お家の仏壇には一番高い所にご本尊を祀り、その下にご先祖様の位牌を安置します。 このようなことは古くは貴族社会の習わしだったそうですが、その後庶民にも広まっていったようです。 宗派により異なるところもあると思いますが、仏壇や仏間は家の中の小さなお寺になるので住まいの聖域として特別な設えをされることが多いと思います。 渡邊工務店 施工実績「窓から四季が感じられる平屋」 現代のシンプルモダンやミニマルモダンの住宅には以下でご紹介するグッドデザイン賞を獲得したコンパクトな仏壇を選ぶことも選択肢に入ると思います。 日本人の心を大切にしながらも新しい生活様式にマッチした仏壇も良いと思います。 2017年グッドデザイン賞受賞 製品名:HK シェルフレックス はせがわとカリモク家具の共同開発 <グッドデザイン賞審査員の評価> 日本のライフスタイルが年々変化しても先祖への感謝の気持ちは変わることがないが、仏壇を置くことのできる環境は変わってきた。この製品は、居住環境の変化に対応する、コンパクトでインテリアに溶け込む美しいデザインである。先祖を敬うものに相応しい、高品質な素材を使いながら、細部のディテールにも拘り、モダンに仕上げられている。 2012年グッドデザイン賞受賞 製品名:いのりのおうち 株式会社インブルームス <グッドデザイン賞審査員の評価> 仏間はもちろん和室すらなくなっている現代の住居において、故人の御霊をどのように奉るかというのは、新たな課題である。できれば、それがインテリアの新たな魅力ポイントの一つになるとよい。この家具は、単に仏壇をミニチュア化したものではなく、新たな祈りの場のかたちを提案しようとしている。家を暗示させる形や、後ろ面が透けていることにより広がり感を感じさせるなど、新しい提案が見られる。故人が「千の風」となって宿り来たるような爽やかさを感じさせるデザインである。 仏壇に手を合わせてご先祖様に家族の近況をお知らせすることや、仏間で久しぶりに会う家族・親戚との交流はなによりの供養になると思います。 供養について調べてみました。 供養とは亡くなったご先祖に対して冥福を祈る全ての行為のことだと言われています。 仏壇に手を合わせる。読経する。お供えをする。故人との懐かしい思い出を語るなどです。 元々は神様や仏様、故人や祖先を敬い今生きている人達との交流の場を作る為、神様や仏様、故人の好きな食べ物や品物を捧げ、音楽や踊りでその場の雰囲気を演出したようです。 8月のお祭りや盆踊りもそんな背景があるのかもしれません。 地元の祭りの夜店で子供たちが賑やかに集い、大人も子供も一緒になって盆踊りを踊る風景は良い供養になっているように思います。 暑さはまだまだ続くようですが、皆様におかれましては楽しく思い出に残る夏休みを過ごされるよう祈念いたします。 ■渡邊工務店の家造りについて詳しくはこちら ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら