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2021.10.18 /
第81回:数寄屋の心とモダニズム
現在の数寄屋造り(すきやづくり)というと日本古来の伝統的な建築のように思われます。 しかしながら江戸時代前まで遡ると、当時の武家社会を中心とした伝統的な格式や身分制度を重んじる価値観の書院造りに対するアンチテーゼ(:主張を否定する主義や姿勢)として生まれた、和歌や茶の湯、生け花などを楽しむ茶室を取り入れた住宅様式です。 当時台頭してきた商人や茶人のような文人の中に書院造りのような格式や華美な装飾を嫌い、内面を磨いて客をもてなすという精神を持つ数寄者と呼ばれる人たちが、敢えて粗末な材料や素朴な丸太を好んで使い、軽妙でお洒落な茶室をはじめとした建物が数寄屋と称されたようです。 数寄屋建築というと茶室を思い浮べますが、茶室の設えはシンプルモダンの極みですね。 武士も町人も身分の分け隔てなく同じ作法で平等に執り行われる茶道も同様の価値観が反映されているように思います。 その後の技術や茶室の文化の深堀りは目覚ましく、現代に至っては本格的な数寄屋造りの建物は特別に高価で高度な技術の集積された高級建築となってしまいました。 渡邊工務店は愛知県内の総合住宅展示場に天然木で造る数寄屋造りのモデルハウスを出展していますが、この度小牧市に数寄屋の心を踏襲(とうしゅう:それまでのやり方を受け継いで、その通りにやること)しながらもモダンな天然木の家の展示棟を建設しました。 小牧展示場(リンクにて他の写真や動画もご覧ください) 建築に限らずモダニズム(:近代的)というと、過去の価値観との決別や否定として捉えられるところが多いと思いますが、数寄屋の心の中にはモダン(:今風でしゃれていること)があるように思います。 千利休は当時最も著名な数寄屋の心を持つインフルエンサーだったと思います。 白鳥庭園、清羽亭の建築施工 かつて名古屋で開催された世界デザイン博の迎賓館として建築された茶室「清羽亭」を渡邊工務店は施工し、芸術院賞の栄誉にその技術力を証明いたしました。 小牧展示場では他社の真似のできない数寄屋の心が宿るシンプルモダンを、素材にこだわった天然木と匠の技を活かした出来映えで実現していますので、是非ともご来場の上ご体感ください。 建物の外観やリビングダイニング、キッチン、設備、ストリップ階段等モダンに仕上げていますが数寄屋の心の源泉の和室は原点回帰の設えとしてあります。 松尾芭蕉の言葉に「不易流行(ふえきりゅうこう)」があります。 「不易という永遠に変わらないこと(もの)を忘れず、流行という新みや変化も同様に取り入れて行くこと」で、不易も流行もともに大切であり渡邊工務店の仕事にも通ずることであると理解しています。 小牧展示場のモデルハウスも数寄屋の心とモダンな設えを同じ視線からご覧いただければ幸いに存じます。 ■「天然木の家・快適エコライフ」小牧展示場について詳しくはこちら ■熟練大工の匠の技について詳しくはこちら ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら -
2021.10.07 /
第80回:緑化の効用
緑化(緑がない場所に植物を植え、植物の持つ機能を利用しようとするもの)による建物の省エネ効果は、緑のカーテン(屋上や壁面)により、室温が3度以上低下する為、冷房電力の20%~40%が節約できると言われています。 緑化は街づくりにも、個人の家造りにも大切なことだと思います。 緑化を都市で考えるとヒートアイランド現象の緩和(緑の役割は天然のラジエータ<加熱や冷却を行う機器>)として真夏日や熱帯夜の発生を抑えたり、オープンスペースの確保による防災効果があります。 愛知県や県下の各市町村において街の緑は、人々に潤いと安らぎを与えてくれるとともに、環境の改善に資する(しする:役立つ)身近で貴重な自然であり、街の安全性を高め、美しい街づくりを進める上でも重要な役割を果たしているとし、公園緑地の整備や緑地保全・都市緑化の推進を図ってきました。 しかしながら、市街地の多くの部分を占める民有地の緑の減少により緑の全体量は減少しています。そのため街の緑の保全・創出・活用を一層推進したいと考えられています。 そのような背景から交付金対象事業として「あいち森と緑づくり都市緑化推進事業」により、愛知県内の市町村等が行う民有地の緑の活用のための取り組みが行われています。 これは、個人の住宅も同様に考えられると思います。 緑化のもたらす心理的・生理的な癒し効果やテクノストレス(デジタルデバイスが原因で生じるストレス)の解消はもちろんの事、ご年配の方にとっては日々の健康増進だけでなく、かつての会社生活から距離を置き、ご近所との触れ合いを深めるきっかけとして、ガーデニングや家庭菜園を嗜むことが役に立つように思います。 緑化の効用は、これからのアフターコロナの暮らしに大切になってくると思います。 それぞれお気に入りの樹木や草花の緑化を楽しんで、四季の暮らしのプラスαになればいいですね。 手前がジューンベリーで奥がハナミズキ 9月中旬のある庭です。手前に大きく写っている樹木は落葉樹のジューンベリーです。 春になると新芽が芽吹き、白い花を咲かせて6月に小さな赤い果実が実ります。 その頃は、様々な野鳥が朝早く訪れて赤い実を啄んで(ついばんで:鳥がくちばしでつついて食べる)います。 奥の樹木は落葉樹のハナミズキで、春に葉が出ると同時に開花し秋まで広葉を付けています。 10月になると秋の落葉前の紅葉が綺麗で季節を感じさせてくれます。 冬は葉が落ちた後なので日が差して明るく感じます。 シマトネリコ こちらのシマトネリコは株立ち(一本の茎の根本から茎が分かれて立ち上がっている様子)で、初夏に小さな白い花を咲かせます。 常緑樹で葉も小さく、葉の裏表に濃淡があり、自然の風に揺らぐ姿がひらひらして風情があります。 庭先に植えると木陰を作ってくれて日中は涼しく風も感じ、そして道路や隣家からの視線を遮ってくれます。 サンパチェンス(パッションオレンジとオーキッド) 花の季節が残り少ないサンパチェンスですが、春から秋まで長く花を楽しめます。 季節感を豊かにするために花を咲かせることにもトライしています。 庭植えだけでなく、植木鉢やハンギングバスケットでの栽培も楽しいですね。 次に何を育ててみようかなと考えてホームセンターのガーデニングコーナーに行くと、時間が経つのを忘れてしまいます。 家は建てた時から古くなっていきますが、緑化はその逆で時が経つほど育っていき、手入れを怠らないといつも新鮮で瑞々しいですね。 住宅新築の計画は新居の完成入居で終わりますが、家族の暮らしと緑化活動は新居に入居した時から始まります。 古くなっていく家での暮らしと、家族の成長と育っていく樹木や庭を見守ることは、貴重な体験として思い出の中に残ってゆくと思います。 かつて家を建てたばかりのお客様が、ご自身の子供の頃にカブト虫捕りで遊んだ里山で幼い息子様といっしょに採ってきたドングリを庭に植えて「このドングリの樹が大きくなって、いつかカブト虫が来るような庭になるといいな。」と仰っていました。 ドングリを植えてから大きな樹に育つまで家族で楽しめそうなお話ですし、息子様が結婚していずれお孫様をつれてその家に帰ってきた時、大きく育ったドングリの樹の下で「じいじ」の子供の頃の話や、息子様と一緒に遊んだカブト虫捕りやドングリ拾いをした里山の話などをお孫様と楽しく語れそうですね。 家を考える時に、ご自身の想いを込めたストーリーの緑化を取り入れてご検討いただけたら嬉しく思います。