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2023.02.10 /
第99回:変動金利と固定金利の考察
先日、近くのカフェへ午後のお茶に行ってきました。 苺のプレートとコーヒーをいただきながら、住宅ローンで悩んでいる方とお話をする機会がありましたのでご紹介させていただきます。 その方は既に変動金利で借入をしていて、これから住宅ローンの金利が上がりそうなのが心配で、今のうちに固定金利の住宅ローンに借り換えようかなというご質問でした。 現在の低金利は名目金利(見かけの金利)であって、デフレ下の実質金利(名目金利から物価上昇率を引いた金利)は過去に比べても高くなっており、これから金利が上がるとなると、賃金や諸々の物価上昇を伴って実質金利は下がってくると思います。よってそんなに心配はいらないのではとお話しました。 その理由について述べていきます。 かつて日本の住宅ローンは今より名目金利がずいぶん高い時代がありました。 40年くらい前は住宅金融公庫という公的融資が主流で金利が固定金利の5.5%でした。民間の金融機関の金利は7%~9%くらいでやはり固定金利が主だったように思います。 名目金利は現在よりかなり高いのですが実質金利は現在よりも低く、当時の物価高騰による金利の実質負担は現在より軽かったように思います。 その背景には日本の高成長と賃金も含めた物価上昇がありました。 住宅ローンは一度借りると借りた元本に対して、固定・変動を問わず定められた金利による利息を付けて元金と共に長期で返していきますが、物価上昇時は給料を含めた物価は複利で上がっていきます。 物価上昇により実質金利が名目金利より相対的に低くなれば、ローン借り入れの負担感は年を追うごとに軽くなっていきます。過去には毎年の賃金アップや土地の値上がりによる含み益により、購入資金を貯めて将来買うよりも、今すぐ借りて買った方が給料は毎年上がって返済が楽になるし、買った不動産は必ず価格が上昇し続けるので、「ローンの借得」とか「土地神話」という言葉を生みだす背景にもなりました。 その当時は日本の歴史の中でも人口構成の最大のボリュームを占める団塊の世代が現役バリバリの時代で、エコノミックアニマルと揶揄されるくらいよく働き、消費意欲も旺盛で物もよく売れ、狂乱物価といわれるような状況も経験しました。 住宅着工戸数も1990年には現在の2倍近い年間170万戸を超えました。 この頃は個人も企業も日本の国や行政も成長する為にお金が必要な時代だったと思います。 よってお金を借りる経費としての利息は高くても、成長と物価上昇でそれ以上のリターンがあり、生活水準も一緒に豊かになっていった日本がイケイケの時代だったと思います。 当時欧米の先進国では「ジャパンアズナンバーワン」、東南アジアの新興国は「ルックイースト」といって日本が敗戦国として何も無く、資源も持たないのにGDP(国内総生産)世界第2位まで躍進した理由を探り、そして見習おうというムードがありました。 日本の栄光の時代だったように思うのですが、その後の「失われた30年」を経験した現在の日本の状況と世界の評価は大きく異なるように思います。 下のグラフは長期にわたる世界の主要国の経済活力の推移を示す指標として参考にしている、全世界の国別株式時価総額割合の1900年から2017年までの推移です。1987年の頃の日本は一番だったのに2017年になるとかなり落ち込んで現在は更に減少しています。 ちなみに1900年のイギリス(UK)の一番は歴史を感じますが今は米国一強の時代ですね。 成熟国になった日本の経済の行方を考えると、成長国のような旺盛な資金需要は減少し、今後住宅ローンの上昇があってもかつてのような高金利は起こらないように思います。 日本ではかつて働き盛りだった団塊の世代も75歳以上の後期高齢者となり、今後は少子高齢化で人口が減少していき、成熟化した日本の経済環境下では住宅も含めて旺盛な新規投資というよりも、価値あるものを長く使うサステナブルな落ち着いた社会に変化していくように思うからです。また財政基盤も新興国に比べるとしっかりしているように思います。 最近までの日本の低成長時代の低金利は名目金利ベースであり、「失われた30年」というデフレ時代の日本の実質金利は過去に比べて高かったと考えます。この低成長下の実質金利負担を延滞することなく毎月返済をして乗り越えてきたのなら、今後も変動金利の住宅ローンで低金利のメリットを追求しても大丈夫だと思いますと申し上げました。 ちなみに住宅投資の向かう先は新築から既存住宅のリフォームに移行するようになると思います。これから新築を検討している皆さまは、サステナブルなリフォーム投資に適した高品質な住宅選びが大切になりますね。 しかしながら、今年は久しぶりに賃金のアップが大きな話題となり、ニュースなどでも物価の上昇が大きく取り上げられています。今後、かつて日本がイケイケだった頃のようになるとは思いませんが、諸外国に遅れを取ることのない持続的な経済の成長の兆しとして前向きに捉えたいと思っています。 更に変動金利のリスクをお話をいたします。 固定金利と変動金利の違いは一言でいうと将来の金利上昇のリスクを誰が取るのかということだと思います。結論から言えば固定金利は貸主である金融機関がとり、変動金利はローンの借り手である施主がとります。 それぞれのメリットを考えると、固定金利を選択すると月々の返済額が多くても、将来の不確実な金利上昇による返済額の増額の心配が無く、計画的に返していけるので安心です。 変動金利は貸主の金融機関からすれば長期にわたり金利上昇のリスクを負わないで必ず損をしない商売ができ、薄利であっても長期的な経営観点から安心なことだと思います。 よってキャンペーン金利や基準金利よりかなり低い優遇金利で貸出しをしても確実に利益が出る変動金利を、皆様には負担の少ないローンとして勧めることが多くなるのかなと思います。 これからの金利動向は日銀の金融政策によると思いますが、今までは「失われた30年」のデフレ状態を脱却する為、物価上昇率2%を目標に大胆な金融緩和が行われてきました。 その割に日本の資金需要は乏しく日本の経済は活性化しませんでした。 変動金利に連動する短期政策金利はその間マイナスに抑えており、変動金利の上昇のリスクは少ないように思います。 また固定金利に連動する長期金利も日銀が10年物国債などを大量に買い入れて金利を低く抑えていたので固定金利も低金利のままでした。 しかしながら最近は経済にも変化の兆しが見え、日銀の長期金利の政策も緩和を少し行うようになり、マイナス金利を実施している世界の中央銀行も日銀だけとなりました。 今後の物価上昇や日銀総裁の交代人事なども含め、様々な要因により日銀の政策変更も先行き不透明感があるように思いますが、変動金利・固定金利とも金利は少しずつ上昇傾向になってゆくように思います。 次に変動金利上昇リスクのセーフティネットについて考えてみたいと思います。 多くの住宅ローンの変動金利は金利上昇による返済金額の大幅な上昇により日々の生活が破綻しないように、セーフティネットとして「5年間ルール」と「125%ルール」があります。 半年ごとに変動の名の通り金利そのものは見直されますが、日々の暮らしに影響のないように金利の変動があったとしても5年間、返済金額は変わらないという制度が「5年間ルール」です。 そして6年目に返済金額を見直した時に増減分を次の5年間の返済で清算していきます。 しかしながら、金利上昇により月々の返済金額がそれまでの月々の返済金額の125%以上になった場合、月々の返済金額は125%に抑えられるという制度が「125%ルール」です。 金利上昇分の利息負担は軽減されずに先送りされ、次の5年間の返済額に上乗せされるのですが、金利上昇幅が大きいと月々の返済額がほぼ利息に充当されて元金が減らず、更に未払い利息が発生すればその分は翌期に繰越されてローン返済を毎月しているにもかかわらず、総返済金額が増えてしまうリスクが生じます。 変動金利のリスクは金利上昇により月々返済額が天井知らずの上昇になって払えなくなり、生活が破綻するリスクではなく、総返済額が増えてしまうリスクになると思います。 もし心配なら当初の返済額は多くても安心な固定金利の選択になるように思います。 返済額を軽減する対策の一つとして、返済金額の中にはローン借入額を引き当てとした団体信用生命保険の掛け金も含まれているので、現在掛けている一般の生命保険の金額や内容を吟味して既存の生命保険の支払いを減額し、住宅ローン返済の原資に充てることを検討しても良いと思います。 これからは昔のような高金利にはならないと思いますが、許容できるリスクの範囲を「見える化」して対策を打ち、変動金利のメリットをとるか、固定金利の安心をとるか検討した方が良いかもしれません。 久しぶりにじっくり住宅ローン金利の話をした為か、ホットコーヒーとスイーツが美味しく感じました。 この時いただいたプレートは地元の大山寺苺をメインに里芋のガトーショコラ、苺のクラフティ―タルト、苺のパンナコッタ、クルミのハニーグラノーラ、抹茶のシフォンケーキアイスのせでした。 ■渡邊工務店の家造りについて詳しくはこちら ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら