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2020.08.26 /
第56回:パッシブデザインハウス
パッシブデザインハウスの“パッシブ”の意味は「受動的で自らは働きかけない」です。 地球環境に配慮したパリ協定の後、ドイツなどのヨーロッパの高緯度エリアで設計され自然エネルギーで住宅エネルギーを賄う、石油や外部からの電気・ガスを使わないゼロエネルギー住宅として見られることが多くなりました。 日本の昔の家もパッシブデザインハウスで、夏をもって旨とすべしと言うように、打ち水をしたり、葦簀をかけたり、朝顔や風鈴をしつらえたり、軒や庇の出を深くするなど様々な暑さをしのぐ工夫がされていていましたが、冬は厳しく現代の生活環境や気候環境の基準からすると快適な暮しには程遠いように思いました。 現代の日本では、建物のUA値(外皮平均熱貫流率といい家の中から外へ逃げる熱の値)を小さくし、電気・ガス・石油等、外部からのエネルギーをなるべく使わないようにして環境の負荷を下げ、快適に生活できる地球にやさしい暮らしを目指していると思います。 <パッシブゼロエネルギーを極める対策> ① UA値を下げる為に、高性能トリプルサッシの採用や断熱材を厚く強化し、家の隙間にシートを被せたりしてUA値を徹底的に下げる。 ② 建物の周りに落葉樹やグリーンカバーを配し、夏の日差しを緑葉で避け、冬は落葉で日差しを受け入れ、窓を開ければ清々しい風を感じる微気候デザインの植栽計画を行う。 ③ 軒の出を深くし、太陽の南中高度(太陽が真南にきて、いちばん高く上がったときの地平線との間の角度で夏の名古屋では70度位)の高い夏は日差しを遮り、南中高度の低い冬場(冬の名古屋では30度位)は建物の中まで日差しが入るようにする。 ④ 太陽光発電パネル、太陽熱温水器、地熱利用等の自然のエネルギーを取り入れる工夫をし、外部からの電気・ガス・石油を使わない地球に負荷をかけない仕組みを作る。 ⑤ ウッドマイレージを減殺する為、木材を遠く離れた海外から船で運んだりすることを止め、せっかくの天然木を、工業製品の様に集成材に加工する費用を省き、地産地消の地場木材を使い、地場産業育成により山林再生まで考えたサステナブルビジネスモデルを指向してゆく。 木材の価格差は外国産集成材と地域材の絶対価格差は縮小しています。 しかし価格の構成比はウッドマイレージの関係で外国産材は運搬燃料費の割合が多くかなり異なると思います。 ⑥ 雨水を利用する天水タンクを設置し、生ごみはコンポストで堆肥を作り自宅敷地内で再利用最終処理を行う。それにともない家庭菜園を促し、楽しく自家消費野菜を育てることにより結果的に社会に負荷をかけない仕組みを作る。 スウェーデンやドイツ等ではこのようなことを徹底的に追求して、外部からの電気・ガス・石油を使わないゼロエネルギー住宅や家庭菜園・家畜を育て自給自足の生活スタイルを徹底し、ある意味仙人のような暮らしを志向されている人々もいます。 渡邊工務店では天然木の住宅で快適に暮らすこと、負担するエネルギーと設備投資費用を一般的な樹脂サッシや断熱材をベースに家庭用エアコン1台で定められたUA値の均衡エネルギーバランスをデザインする“マッハシステム”で挑戦しています。 しかしながら、お客様に求められれば太陽光と太陽熱を両方活用したパッシブデザインのレジリエンス住宅を供給することも可能です。 国土交通省の主管する令和元年度サステナブル建築物等先導事業(省CO₂先導型)について渡邊工務店も参加するプロジェクトハイブリッド太陽エネルギー利用住宅先導プロジェクトが採択されていることも併せてご紹介いたします。 (FHアライアンスホームページより) 渡邊工務店は様々なポイント(建築予算、天然木の風合い、暮らしの快適さ、地域気候環境、地域産材との連携、UA値の均衡エネルギーバランスを考えた設備投資等)を深く検討し、新しい取り組みにもチャレンジしてお客様それぞれの住まいの最適解を求めていきたいと思います。 <ご参考コラム> ウッドマイレージのコラム 先導事業の取組のコラム レジリエンス住宅のコラム ■エアコン一台で快適空間「マッハシステム」について詳しくはこちら ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら -
2020.08.18 /
第55回:草屋根
2014年6月の渡邊工務店のブログから木創庵の写真を紹介します。 木創庵は渡邊工務店の着工式を初めとしたお客様をおもてなしする施設として活用しています。 遠景はシャープな片流れの平屋の建物です。 渡邊工務店飛島本社の前に建っていますので、平屋の外観デザインの参考にご覧いただければ嬉しく思います。 少し寄ってみると屋根に草が生えています。 背景は渡邊工務店本社社屋です。 もう少し寄ってみるとシロツメクサ(クローバー)や雑草が分かります。 ここまで寄ると、どこかの草原ですね。 冬になるとこんな感じになります。 (ダイキン工業のHPより)ノルウェーの草屋根 草屋根はノルウェーが有名です。 屋根に木の皮を貼り、土をのせて草を植えます。 厳しい冬場は土の断熱性が寒さを防ぎ、夏場は草の蒸散作用の気化熱により、快適な暮し易い室内環境を実現できる昔ながらの工夫です。 草屋根と周りの草原が風景に溶け込んでいるので全体の景色が絵葉書の様に綺麗です。 雑草が生えても周りの草原と同化しているので雑草抜きの作業も不要で、その状態に風情があります。 ノルウェーの首都オスロの緯度は59.55、名古屋は35.10、札幌市は43,05なので如何に北国かがお分かりいただけると思います。居住するエリアにあった条件で断熱や省エネの工夫を昔からなされているところに敬意を感じます。 地域や風土と文化や社会そして設備の進化に調和した持続可能な木造建築を、渡邊工務店も目指していきたいと思います。 ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら -
2020.08.11 /
第54回:窓と断熱材と適材適所
8月に入って毎日暑い日が続いています。 マスクで出歩くには厳しい暑さで、熱中症対策も気にかかるところです。 高気密・高断熱の住宅は室内の快適な暮らしには欠かせないことですね。 高気密とは隙間を無くして建物の気密性を高めることで主に窓サッシや玄関の対応であり、高断熱とは断熱材の性能を良くして建物の断熱性を高めることです。 北海道に行くと、窓はトリプルサッシやFIX窓、押出窓が多くみられ大開口の掃き出し窓は少ないように思います。 玄関を2重にした風除室の設置も愛知県では見られない設計です。 建物外観が北欧のようなイメージの街並みが見られます。 北海道内の主要都市と世界の都市の緯度の比較(緯度が高いほうが北極に近い) ミラノ:45.47、稚内市:45.40、サラエボ:43.85、旭川市:43.77、モナコ:43.73 マルセイユ:43.29、小樽市:43.19、ウラジオストク:43.12、札幌市:43.05 ローマ:41.89、函館市:41.78、バルセロナ:41.38 ちなみに、ベルリン52.31、ロンドン51.50、パリ48.51はずっと北方にあります。北欧スェーデンのストックホルムに至っては59.35です。 名古屋の緯度は35.10なので上記の都市に比べて随分南方です。 イラクのバクダッドが33.20、シドニーが33.52で名古屋に近いと思います。 愛知県に適合した快適な室内環境を造るには名古屋の緯度35.10にあった設計が必要です。 日本の家は“夏をもって旨とすべし”と言われていますが、本州の東京以南を前提にしていて北海道では“冬をもって旨とすべし”です。 ヨーロッパの都市も北海道より高緯度エリアが多く、昔の住まいは石造りで小さな窓の家が多かったと思います。 ちなみに緯度的に縦に長い日本の国土(37.7万㌔㎡)がもしヨーロッパにあると、ドイツ(35.5万㌔㎡)、イタリア(30.1万㌔㎡)、イギリス(24.2万㌔㎡)に比べで人口・国土面積とも凌駕している大国になると思います。 そんな地理的条件により、日本では快適な家造りの指標となるUA値は地域ごとに求められる数値が異なることとなりました。 UA値とは外皮平均熱貫流率といい家の中から外へ逃げる熱の値です。 下記表は平成25年省エネ基準の中のUA値省エネ基準 UA値を別の角度から説明すると温度を1度上げたり下げたりするときに1㎡当りにかかる外皮貫流熱量のことです。 W数で表すと1㎡当りの1度の温度変化には1W熱量が必要であり、それがUA値=1.0です。 一般的な2階建て40坪(外皮面積350㎡の場合)で検討してみましょう。 UA値=1.0の場合 350㎡×UA値1.0=350W(温度が1度上下変化するに必要な熱量) 温度を20度上げたいとすると20度×350W=7000Wのエネルギーが必要です。 UA値が=0.5の場合 同様の計算式なので3500Wの熱量で足ります。 よってUA値を1.0から0.5に小さくすればエネルギー(電気代)も半分になります。 先般見学会を開催した街角モデルハウスはUA値0.46なので3220Wになります。 家庭用ルームエアコン14帖タイプは4.000Wなので熱量的にはこのエアコン一台で下記名古屋市の気象データであれば真冬の最低低気温にも対応できると思います。 居住室内全体の空気環境を満遍なく室内温度20度に設定・維持すれば高原リゾートで暮らす別荘生活と同様に快適な暮らしが実現できると思います。 新芽時の高原の小川に流れる梅花藻ですが、マッハシステムで建物内にこんな気候を実現したいと考えています。 名古屋市 年平均気温:15.8 ℃ 年降水量:1535.3 mm 統計期間:1981~2010(気象庁データより) よって、快適な居住空間を得るには断熱材や窓の性能アップの競争ではなくそのエリアの気象環境と建物のUA値、空調機や換気システムなどの室内空気環境を維持するための設備の投資を含めたバランスが重要になると思います。 その窓と断熱材によって、愛知県で建てる建物空気環境の何をどのようにしたいのかを問いたいと思います。 マッハシステムのような全館空調システムと組み合わせて初めて良質な空気環境は実現すると思います。 良質な空気環境の実現を窓や断熱材のスペック競争でごまかしてはいけないと思います。 渡邊工務店は木材の適材適所と同様な価値観でマッハシステムを取り入れて室内の快適な空気環境の実現を追求しています。 ■エアコン一台で快適空間「マッハシステム」について詳しくはこちら ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら