-
2021.06.29 /
第76回:紫陽花と庭
渡邊工務店が施工に携わった、自然素材を活かした本格的な数寄屋造りの茶室「清羽亭」がある白鳥庭園は本格的な日本庭園で、今は紫陽花が見頃と白鳥庭園のホームページで案内されていました。 私は先日、梅雨時の晴れ間に、近くの紫陽花園に行ってきました。 こちらも今が盛りでとても奇麗に咲いていました。 私の好きな正岡子規の俳句に「紫陽花や 昨日の誠 今日の嘘」という一句があります。 日々、薄紫から濃い紫色へと少しずつ変化する紫陽花の様子を擬人化して表現しているのと同時に、「人の心も花の色のように移ろいやすいもの」という気持ちが込められているとのことですが、年を重ねるほどに様々な人達との交流を思い浮べてしんみりする俳句です。 紫陽花の花言葉は花の色が変化することから「変節(へんせつ:自分の信念を時流などにこびて変えること)」「移り気」「浮気」という花言葉が有名ですが、イメージがよくありませんね。 しかしながら多くの西洋紫陽花は、小さな花がひしめき合って咲いているように見えることから「団らん」「和気あいあい」「家族」という花言葉もあります。 そして、日本原産の額紫陽花(がくあじさい)には、「謙虚」という意味の花言葉があります。 額紫陽花は、西洋紫陽花のような華やかさはなく、少し控えめで可憐な雰囲気の紫陽花です。そのイメージから「謙虚」という花言葉がつけられたといわれています。 こちらの花言葉はお気に入りです。 額紫陽花は小ぶりに整えると、小さな自宅の庭にも謙虚に収まりいい感じです。 実は紫陽花は日本原産の植物ですが、江戸時代に長崎の出島にドイツ人医師として来日したシーボルトによってヨーロッパに持ち出され、ヨーロッパの人々にも親しまれ現在はヨーロッパで品種改良された艶やかな紫陽花が逆輸入されるほどになりました。 そんなわけで紫陽花は本格的な数寄屋の建物がある日本庭園や、シンプルモダンの洋風の建物のガーデニングにもよく似合い、梅雨時にぴったりの庭の設えになると思います。 また花の色は紫陽花の性質だけでなく育つ土壌のpH(ペーハー:液体が酸性なのか、アルカリ性なのかを表す尺度のこと)によっても変わります。 植木鉢で奇麗なブルーの紫陽花を育てていて、庭に植え替えると別の色の紫陽花の花が咲いてしまうことは紫陽花あるあるです。 逆に土壌をコントロールすることで紫陽花の花の色を楽しめる事ができると思います。 日本の四季の中で梅雨時はじめじめして鬱陶しく思われがちですが、美しい紫陽花を庭に植えて梅雨時を楽しんでみることもいいと思います。 そのような梅雨時でも次世代全館空調「マッハシステム」なら建物の中を高原のリゾートのような爽やかな空気にしてくれます。 マッハシステム搭載の住宅展示場をご体感頂ければ嬉しく思います。 こちらから来場予約頂くと、紫陽花が見頃の「白鳥庭園」入園券と茶寮「汐入」呈茶セットのペアチケットをプレゼントいたします! この機会に是非ご来場ください。 スタッフ一同、心よりお待ちしています。 ■渡邊工務店の家造りについて詳しくはこちら ■エアコン1台で快適空間「マッハシステム」について詳しくはこちら ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら -
2021.06.17 /
第75回:陰翳礼讃
先日、ある番組を見ていると、欧米の方が日本家屋の照明は昼光色(ちゅうこうしょく:他の色と比べて白っぽく青みがかった最も明るい色)のLEDや蛍光灯を多用していて、夜でも昼間のように明るく白すぎて落ち着かないと仰っていました。 このようなご指摘はライティングデザインとして、日本の中でも多くの方からご指摘されるところになっています。 そういえば欧米の家屋のリビングや寝室は電球色のLEDや電球を薄暗く配したり、キャンドルや暖炉の火を使ったりして暖色の薄明な空間をつくるケースが多いと思います。 天井シーリングライトがなく、灯りはスタンドで設えられている客室のホテルはよく目にします。 同じようにホテルのラウンジバーやレストランも照明は落ち着いた感じです。 恐らく、折角の夜を昼間のように明るくしないで、豊かな大人の夜の時間を過ごしてほしいとのことだと思います。 海外の映画やテレビの海外旅行記でみるナイトライフを垣間見ると羨ましくもあります。 ところで昭和初期に文豪の谷崎潤一郎が「陰翳礼賛」(いんえいらいさん)という随筆で、こちらの欧米の方と同様なことを仰っています。 近代化して電灯などで明るくなり、便利な電化製品が日常の暮らしに取り入れられる中、室内の設えや日本古来のライティングに対する想いを語ってらっしゃいます。 近代化と共に欧米に憧れ影響を受けてきた日本の新築住宅は、現在でも可能な限り部屋の隅々まで明るくして、陰翳(いんえい:光の当たらない暗い部分)を消す事に執着する傾向が少し残っているように思いますが、それ以前の日本ではむしろ陰翳を認めるところに、日本古来の美意識・美学の特徴があると主張されているように思います。 こうした主張のもと、建築、照明、紙、食器、食べ物、化粧、能や衣装の色彩など、多岐にわたって陰翳の考察がなされていて、海外でも翻訳されていてデザイン論としても評価が高いようです。 渡邊工務店施工事例より1 欧米の方も谷崎潤一郎も日本や海外のライティングに対して、相手方を真逆な立場として捉えて同様なことを言っているようで不思議な感じです。 渡邊工務店施工事例より2 陰翳礼賛の例えとして、白塗りの舞妓さんは白昼や蛍光灯の下では違和感がありますが、夜の和室で行燈(あんどん: ろうそくや油脂を燃料とした炎を光源とする照明器具)の揺らめく灯りに照らされた姿は妖艶そのものです。 同じように、金屏風や螺鈿(らでん:夜光貝その他の貝類を彫刻して漆地や木地などにはめこむ技法)細工、金蒔絵(きんまきえ:漆器の表面に金箔を細かくした消粉で絵や文様、文字などを描き、器面に定着させたもの)や真っ赤な漆器も、蛍光灯の下や昼間にそれだけを見ると少し悪趣味かなと思うところもありますが、老舗旅館や料亭でそれなりの薄明のライティングと設えで見ると、違和感なく艶めかしく受け入れられます。 家の内装やインテリア、照明を考える時に、大壁工法で白い壁クロスを張り、明るいライティングにすることも良いとは思いますが、成熟化した世の中になり、家で過ごす時間を大切にする事も多くなってくると思うと、陰翳礼讃に習う事も考えてみてはどうでしょうか。 渡邊工務店は本格木造軸組工法を基本としていて、柱だけでなく内装に杉や桧の天然木の素材を活かす工夫もしています。 「マッハ空間」-Cube-大府展示場より 暖色系のライティングとの相性が良く、生成色(きなりいろ:ごく淡い灰色がかった黄褐色)の壁材と共に和室の障子や畳では、ライティングの映しだけでなく、トワイライトの日が差し込む障子紙ともマッチすると思います。 量産型の工業化住宅やプレハブ工法だとなかなか困難だと思いますが、日々の暮らしに日本人が古くから持っていた趣味や美意識を取り入れてみるのも良いのかなと思います。 「天然木の家・快適エコライフ」春日井展示場より ■施工実績について詳しくはこちら ■渡邊工務店の家造りについて詳しくはこちら ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら -
2021.06.03 /
第74回:ウッドショックとSDGs
コロナ禍を発端とした需給ギャプによる、木材の高騰による建築現場の混乱は終息の気配を見せませんが少し変化の兆しもあります。 アメリカの木材の価格が5月初旬の高騰時より20%近く下落している状況です。 トレーディングエコノミックスより このような木材価格の変化はアメリカの建築現場にもまだ影響が少ないようですが、年率換算のアメリカ新築着工は4月には3月より予想に反して減少となりました。 そして過熱気味のアメリカ証券・金融市場では、年後半に金融緩和縮小やインフレ懸念による金利上昇によって、現在のアメリカの住宅ブームも落ち着くこともあるとも言われています。 そうなると現在のウッドショックの様相も変化するかもしれません。 ウッドショックについては、この一年間の短期的な対応と長期的な対策を考えないといけないように思います。 渡邊工務店は東濃エリアの地域材を製材組合と直接取引しているので、世界的なウッドショックにより木材の仕入れが出来なくて建築現場が止まるようなことはないと思います。 価格についても買い手良し、売り手良し、世間良し、の三方良し、を基本にしていたからこその114年間の事業継続があったと思います。 それでも全体の市場の価格変化に影響を受けることは否めませんが、今まで価格重視で安く買いたたいてきたローコスト系住宅会社や建売会社が、高い値付けをして木材を仕入れたくても調達できなくて建築現場が困るようなことにはならないと思われますし、弊社としては同じような扱いを受けるようには思いません。 そして、今回のウッドショックは木材資源の特殊性と大切さを再認識させてくれました。 木材は天然資源で苗木を植えてから伐採して使用できるまで、桧柱の12㎝角(3m)で最低でも50年くらい、杉は40年くらい掛かります。 困ったからと言ってすぐに対応できるような資源や産業ではありません。 北米の大きな木材会社は北海道と同じ位の面積の森林を保有しているそうですが、毎年森林の2%を計画的に伐採し、植林をしているそうです。 2%の伐採・植林だと全体の森林を50年で一回りすることになるので永続的に循環して森林事業が営むことが可能です。 また、樹木の二酸化炭素を取り込む力は育つ力の強い若木から壮年木が強く老年木になると衰えていくようです。 よって、50年単位で計画的に営まれる森林事業はカーボンニュートラル(カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)にも貢献する事業であると思います。 かつて南米アマゾンや東南アジアの無法伐採が環境破壊を引き起こしてしまいましたが、元に戻るまでは大変な時間と労力がかかります。 その影響は気候変動だけでなく海洋漁業や近隣の農業にも深く影響があるそうです。 2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標としてのSDGsの考え方でウッドショックを見直してみると、持続可能な林業の育成が住宅建築業だけでなく地球環境にも大切なように思います。 私たちの日本においてもSDGsの発想で林産業を振興しカーボンニュートラルに貢献できるように思います。 日本の国土の約7割は森林といわれていますが、今回のウッドショックが森林の価値を見直し更に活かす契機になればと思います。 海に囲まれて四季のある恵まれた森林国土を大切な資源として活かしていく工夫が試されると思います。 森林が荒れると気候だけでなく天然のダムとしての治水や沿岸の漁業にも影響を及ぼします。 また、循環型の森林資源の管理は木の成長育成を通じて二酸化炭素の固定化を促進し、カーボンニュートラルの実現に寄与すると思います。 そして私達のような木材を加工する側の建築会社の役割も大きくなると思います。 東濃桧のような地域に根差した高品質で美しい天然木素材、その素材を活かして魅力的な木造建築を作る技術、その技術の証とした長い業歴・歴史が必須の条件になると思います。 そのように造られる100年住み継がれていく家は、欧米のような長寿命の循環型の社会資産としての不動産の役割と共に、長期にわたる二酸化炭素の固定化機能としての役割でカーボンニュートラルにも貢献するように思います。 先日、渡邊工務店で17年前に建築いただいたお客様からお手紙を頂きました。 訳あってご自宅を売却されるにあたって、下記のような内容のお礼のお手紙でした。 当時生まれたばかりのお子様は高校生となり、現在は中学生のお子様もいらっしゃるとのことです。 新築から17年間のこの家での暮らしが、ご家族としての青春の1ページに深く刻み込まれ、仲良く幸せに暮らせた家でしたとのお礼を頂いた次第です。 また新しいオーナー様は当初は建替え予定で、新しい家を建築するご予定でお客様の敷地をご購入されたそうですが、実際に渡邊工務店の建物を見て壊すには勿体ないと、そのまま住み続けて頂くことになったとお手紙でお知らせいただきました。 渡邊工務店として有難いお言葉とエピソードを頂き感謝の念に堪えません。 社内で共有し、これからも同じようなお話を頂けるように精進していく所存です。 社長の渡辺も、こつこつとプライドを持って技術を活かし真面目に長年やってきて良かったと、専属率100%の各職方にもこのお施主様のお言葉を伝えると、感激して申しておりました。 渡邊工務店で建築した木造建物が子々孫々に引き継がれるだけでなく、社会資本としてまだ見ぬ新しいオーナーへ引き継がれていき、持続可能な社会とカーボンニュートラルな世の中の実現にお役に立てるよう願っています。 外務省のJAPAN SDGs Action PlatformにてSDGsの説明や日本政府の取り組み、そして各団体の取り組み事例が紹介されています。 各団体の中の企業取り組み事例では、渡邊工務店の取り組み事例も紹介されていますので、外務省のJAPAN SDGs Action Platformと共にご覧いただければ幸いです。 紹介事例より抜粋 ■SDGsの取り組みについて詳しくはこちら ■森づくりの活動について詳しくはこちら ■渡邊工務店の家造りについて詳しくはこちら ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら