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2024.03.05 /
第110回:木材輸出とブランド化
日本における国産木材の輸出について、業界だけでなく林野庁などの行政も後押ししていることはあまり知られていません。 我が国は、戦後造成された人工林資源が利用期を迎え、国産材の需要拡大が急務となっていますが、国内での利用拡大のみならず、海外にも付加価値の高い建築用の木材を輸出して山の資源を守り育てていくことが望ましいと考えられています。 日本の住宅は、量産型のプレハブ工業化住宅やビルダー各社による輸入外国産材をベースにした集成材による柱の見えない大壁工法の住宅が多くなり、外観は奇抜ですが無機質な街並みや内観になってしまっています。 日本各地の社寺などの木造建築や古くからの街並み、そして古民家などは、海外からのお客様の訪問先として人気を博しています。多くの海外のお客様に日本建築の持つ素晴らしさや木材製品の持つ価値に興味を持っていただいていると思います。 下記のデータにあるように、日本は世界的に見ても森林国です。また、東濃桧などのように建築に使用される高付加価値のブランド木材はそのほとんどが人工林であり、伐採期・建築の利用期に入っています。 現在の日本の森林蓄積は約54億㎥になっており、特に人工林蓄積が増加しています。過去50年で約6倍に増加し、近年は毎年約6千万㎥増加しています。 そして、その人工林の樹齢の半数以上が50年以上の利用期に入り、伐採を要する時期に差し掛かっています。 下記の資料は、日本の森林資源の蓄積の推移と5年ごとの等級で表された人工林の面積です。 また、下記の資料によれば、世界の木材の丸太生産量(≒需要量)は増加する見込みですが、その多くは産業用・燃料用であり、付加価値の高い建築用材は多くありません。 まして東濃桧のようなブランド材の価値を浸透させるには、程遠い現状です。 先般のコロナ禍によるウッドショックにより、世界中で木材の価格が高騰し、日本でも住宅建築費が上昇しました。 しかし、世界の木材消費の中心は、付加価値の低い燃料用や産業に使用される丸太が多くを占めており、成長に50年を要する木材を、匠の技を通して高い付加価値を持つ建築材として扱う工務店に携わる者として残念な思いです。 今後の新興国や世界経済の発展とグローバル化を考慮すると、付加価値の高い製材などの木製品の増加も予測されており、このような製品の付加価値を高めて輸出や利用促進に寄与できるように、日本の銘木や桧、杉などの地域ブランド木材が役に立っていければと思います。 日本の銘木や東濃桧のようなブランド材が国産材の付加価値を高め、輸出を後押しして世界から認められることは、渡邊工務店の使命でもあると思います。 日本のインバウンド政策が実り、海外の方々が日本を訪れる機会が増えました。最近では、旅行の内容も成熟し、有名な観光地だけでなく、造り酒屋や田舎の里山にある古民家などの体験型ツーリズムが人気を博しています。そして、そこで触れ合う日本建築に感動されています。 私たちがヨーロッパの古い街並みや小さなお店、市場、ワイナリーに感動を覚えることと同じように思います。伝統的なヨーロッパの建物は古くても手入れが行き届いており、断熱性能などは日本よりも高い性能を誇っています。住宅投資は新築よりも古い建物の維持管理や性能向上に費やされています。例えば、日本と同じ島国のイギリスの建物の平均寿命は、日本の30年よりも4倍以上の140年になります。イギリスは石造りで日本は木造建築といっても、法隆寺は1,300年経っていますし古民家やお寺や神社でも100年以上経った木造の建物は数多く見受けられます。 海外の古い街並みはその土地の風土にマッチし、住む人々や旅行者から愛されています。だからこそ、既存の建物に住宅投資をし、大切に長く暮らすことが重視され、住宅の寿命も結果的に長くなるのだと思います。 下記の表の(100-リフォームの投資割合)が新築の投資割合になります。 日本は世界の中で新築割合が多く、住宅への愛着価値からすると悲しいことだと思います。 私たち日本人は地域や風土に根差した国産材、中でも東濃桧のようなブランド材を活用することが、日本の山の暮らしや産業を守り、景観や治水を守ることに繋がると思います。地域や風土に根差した建築材を育て、それを活用していくことが結果的に海外と同じような愛着のある長寿命の住宅を作っていくことに繋がると思います。また、海外からのお客様にそのような建物を日本人の普段の暮らしの中で感じていただければ、東濃桧などのブランド木材を付加価値の高い建築材として輸出するきっかけになるかもしれません。 そのような資源があるのにもかかわらず、量産型の工業プレハブ住宅や外国産材による集成材のビルダー住宅が建っていくのは少し残念でもあります。 しかしながら、最近古民家再生が脚光を浴びてきたことは、伝統的な木造建築やアンティークな家具や建具に対する愛着の価値観が芽生え、結果的に日本建築が見直されて欧米と同じような住宅の長寿命に繋がることになると思うので、嬉しい限りです。 渡邊工務店としては、地域ブランド材である天然木の東濃桧を活かした本格木造建築を、現代の技術を活かして高いレベルの耐震等級や断熱性能、次世代全館空調「マッハシステム」による空調環境を実現し、ヨーロッパの建物や街並みと同じように、地域に末長く愛され海外の方にも興味を持っていただける建物を供給し、東濃地域の山や森林産業を守ることで、将来的には東濃桧が海外からも引き合いがきて木材輸出に貢献できるような未来の一翼を担えたら、嬉しく思います。 ■渡邊工務店の家造りについて詳しくはこちら ■最寄りの展示場について詳しくはこちら ■資料請求はこちら