2018.08.27 /
第20回:天然木の法隆寺は1,300年以上の長寿命
木質系住宅会社が木造住宅の長寿命、耐震性の素晴らしさを説明する時に、世界遺産になっている奈良の法隆寺が世界最古の木造建築であり、1,300年以上たった今でも立派に建っている話をする場合があります。
渡邊工務店も木造建築をメインにしている会社なので、誇らしく思っています。
実際のところどうなのか、いろいろ調べてみました。
一番参考になったのが、岩波新書 「木造建築を見直す」(坂本功著 建築工学者、東京大学名誉教授)でした。
内容的にはかなり専門的なところもありましたが、この本の45ページの後半に記述されていた「法隆寺を建てた大工は、1,300年もつものをつくったのではなく、1,300年もたせるに値する建物をつくったのです。」というくだりです。
老朽化し、欠陥がでてきても修理と補強を繰り返し、その建物を愛し生かし続けさせようという匠の技の大工の維持管理があってこそ、1300年以上も残ってきたものと語っています。
地域に根差した思い入れの強さかなと思います。日本の古い町並みも同様ですね。
木の特性を無視した集成材や新工法では難しいかもしれません。
ところで日本国内に流通している住宅に占める中古住宅の割合は約15%以下です。
新築住宅の80万戸前後に対して中古住宅の数は20万戸を下回ります。
一方、欧米では中古住宅の割合の方が高く、アメリカでは約80%弱、イギリスでは約90%弱が中古住宅で占められます。
また、住宅投資にかかわるリフォーム投資の割合は日本が30%弱、イギリス、フランスは50%強、ドイツにいたっては70%を超えています。
世界の住宅寿命は中古住宅流通やリフォーム投資の割合に比例して長くなっています。
日本は新築を作っても、建てた人は手をあまりかけず、次の世代に引き継がれずに解体されて、また新築を建ててしまうことになっているのでしょうか?
「法隆寺的に表現すると、建てた大工は、世代を超えて愛され、長く引き継がれることに値する建物をつくらなかった。」ということになります。
はやりのメンテナンスフリー住宅も物理的特性ばかり議論していると、世界の中でガラパゴス化して、次の世代に引き継がれずに空き家が増えていくような気がします。
天然木の太い柱の無垢の家は、そこに暮らす家族の思い入れを育んでいくと思います。
日本の各所に存在する社寺仏閣も天然木なのはそんな理由かもしれません。