2024.04.01 /
第111回:桜とサクラ材
先日、近くの桜公園で桜の開花を目にしました。今年も満開の桜を見るのが楽しみです。
年を重ねるごとに、去年の春と違った春を感じて、あと何回この公園の桜の花を見られるのかなと考えたりもします。
さくらの名の由来は諸説あるようですが、いにしえの呼び名である田植えの時期にやってくる田の神「クラ」が宿る木「サ」に由来するとされています。
神が宿る場所を表す神座の意味として縁起の良い名前の樹木ですね。
当て字で佐倉・佐蔵などの地名や人名も多く、私の好きな日本酒の銘柄や酒造メーカーにも”桜”の名が多い事もあって、好きな名前の樹木です。
日本人にとって桜とは、花が一斉に咲き、そして一斉に散って落花が風に舞う風情などに思いを馳せるのか、歴史的に見ても切っても切れない深いつながりを感じさせます。
桜の樹にはいくつかの種類があり、花見でよく目にする桜はソメイヨシノです。
ソメイヨシノは日本全国で何百万本も植えられていますが、元は江戸時代に江戸の染井村に発見された木だそうです。
ソメイヨシノの繁殖の特徴に自家不和合性(じかふわごうせい:自己の花粉では受精せず、他者の花粉でのみ種をつけるという性質)があり、受粉して種を作るにはソメイヨシノ以外の桜の花粉でしか種が出来ず、雑種の交配となり純粋なソメイヨシノに育ちません。
そのため、ソメイヨシノは挿し木(増やしたい植物の若い枝・茎・葉などを切り取り土にさして根を出させる方法)若しくは主に大島桜を台木にした接ぎ木(増やしたい植物の茎や枝を他の植物につなぎ合わせる方法)のみで繁殖されます。
つまり、日本全国やワシントンなどの世界各地の有名なソメイヨシノの桜並木は、元をたどれば江戸の染井村のソメイヨシノにたどり着きます。
不思議なことにこれらの桜は、完全なクローン体なので遺伝子が全く同じです。
またサクラは建築の材料としても化粧材や床材に好まれて使われていると思います。
サクラと名前の付く材にはカバサクラがありますが、これは本物の桜ではありません。
木目が美しく、木肌は桜の花のような白さに少し黄色味もあり、美しい人気の木材で床材によく使われていると思います。
床材でサクラ材と言えば、カバサクラのようなところもありますね。
しかし海外ではバーチ(樺)とよばれチェリー(桜)とは区別されます。
植物種としても、樺はカバノキ科で桜はバラ科と別種で区別されています。
日本ではその辺が曖昧ですが、建築材として桜への想いに寄せているのかも知れません。
本来桜材は樺材に比べ少し赤みがあるようで、床材ではブラックチェリーが良く使われると思いますが、少し価格が高くなるかもしれません。
それぞれの無垢材は年月が経つと、黄色みや赤みが増してくるので、その変化も楽しみですね。
日本人が持つ桜への思い入れと、樺材の風合いがマッチして カバサクラと命名したのかも知れません。とても風合いの良い木材だと思います。
サクラと名の付く木材には、色々な樹木の種類や由来があるようです。展示場やワタナベビレッジの銘木館で、実物を体感頂ければ幸いです。
以前ご入居宅をお伺いしたお客様からお聞きしたお話ですが、銘木館で木材の打ち合わせを行った際に展示してあった水目桜の柱を気に入って、和室に床柱として取り入れられていたことを思い出しました。モダンで印象的な雰囲気の和室でした。
水目桜は木の姿かたちやその葉や花が桜に似ているので、桜の名前がつけられていますが、カバノキ科です。樹皮を傷つけると水の様に樹液が出るので、水目桜と呼ばれています。
皆さまもまだ見ぬお気に入りの木材との出会いがあると嬉しく思います。