2023.09.28 /
第106回:徳川美術館を訪れて
私は現在関西に住んでいますが、先日所用で名古屋を訪れた折に徳川美術館の見学に行ってまいりました。
(徳川美術館正面玄関より、かつての尾張徳川家別邸の表門(通称:黒門)を眺める)
目的は第2展示室に展示されている「猿面茶室」と茶の道具の室礼を見るためでした。
徳川美術館の館内にある「猿面茶室」はかつて名古屋城二之丸庭園にあった御茶室を復元したものです。
見学を思い立った理由は、名古屋城の二之丸庭園にかつて存在した御茶屋「余芳」の移築再建の一部に、渡邊工務店も携わらせて頂くことになったからです。
「余芳」は二之丸庭園に6箇所あった茶屋の一つです。
明治初めに個人の所有となり城外に移築され、昭和48年(1973年)に名古屋市指定文化財となりました。
建物は、平成23年(2011年)に名古屋市に寄贈され、現在は、市が元の位置への移築再建を目指し整備を進めています。
その計画の一環として、渡邊工務店の110余年の歴史の中で蓄えられてきた匠の技を生かして、200年程の歴史ある古材を修理させて頂きました。
「猿面茶室」の復元と異なり「余芳」は名古屋城二之丸庭園内での移築再建となります。
名古屋城二之丸庭園にあった「猿面茶室」ですが、京都の待庵 ・犬山の如庵と並んで茶室として歴史があり国宝にも指定されていたのですが昭和20年(1945年)に戦災により焼失しました。
もともとは織田家がかつて居城とした、清須城内に営まれていましたが、慶長15年(1610年)、名古屋城築城の際に移築され、接待場にあてられていたと伝えられています。
茅葺屋根(かやぶきやね:ススキや藁などの材料を使用して葺く屋根)の素朴な外観を形成し、中柱の隣の二枚障子の口の外には広縁を付しています。
四畳半に台目構えの点前座(てまえざ:茶席で亭主が茶を点てるために座る場所)を添え加えた間取は、古田織部や小堀遠州の好んだものであるとされています。
下記の「猿面茶室」の写真は美術館の内部が写真撮影できない為、当日購入した徳川美術館ガイドブックより転写した画像です。
(猿面茶室の外観) (間取り)
(茶道具の室礼)
茶の道具は工具などのものを作る為の道具と異なり、茶の文化を形づくるものとして歴史の中で育くまれてきた日本文化を代表する美術工芸品だと思います。
そして茶の道具の室礼(しつらい:飾りや調度をその場にふさわしく整えること)は本物の数寄屋の建物の中で際立つように思います。
工芸的、美術的価値を際立たせる室内空間は本物の日本建築が醸し出すように思います。
渡邊工務店の家造りを展示場や完成現場見学会で体感頂ければ幸いに存じます。