2021.06.03 /
コロナ禍を発端とした需給ギャプによる、木材の高騰による建築現場の混乱は終息の気配を見せませんが少し変化の兆しもあります。
アメリカの木材の価格が5月初旬の高騰時より20%近く下落している状況です。
このような木材価格の変化はアメリカの建築現場にもまだ影響が少ないようですが、年率換算のアメリカ新築着工は4月には3月より予想に反して減少となりました。
そして過熱気味のアメリカ証券・金融市場では、年後半に金融緩和縮小やインフレ懸念による金利上昇によって、現在のアメリカの住宅ブームも落ち着くこともあるとも言われています。
そうなると現在のウッドショックの様相も変化するかもしれません。
ウッドショックについては、この一年間の短期的な対応と長期的な対策を考えないといけないように思います。
渡邊工務店は東濃エリアの地域材を製材組合と直接取引しているので、世界的なウッドショックにより木材の仕入れが出来なくて建築現場が止まるようなことはないと思います。
価格についても買い手良し、売り手良し、世間良し、の三方良し、を基本にしていたからこその114年間の事業継続があったと思います。
それでも全体の市場の価格変化に影響を受けることは否めませんが、今まで価格重視で安く買いたたいてきたローコスト系住宅会社や建売会社が、高い値付けをして木材を仕入れたくても調達できなくて建築現場が困るようなことにはならないと思われますし、弊社としては同じような扱いを受けるようには思いません。
そして、今回のウッドショックは木材資源の特殊性と大切さを再認識させてくれました。
木材は天然資源で苗木を植えてから伐採して使用できるまで、桧柱の12㎝角(3m)で最低でも50年くらい、杉は40年くらい掛かります。
困ったからと言ってすぐに対応できるような資源や産業ではありません。
北米の大きな木材会社は北海道と同じ位の面積の森林を保有しているそうですが、毎年森林の2%を計画的に伐採し、植林をしているそうです。
2%の伐採・植林だと全体の森林を50年で一回りすることになるので永続的に循環して森林事業が営むことが可能です。
また、樹木の二酸化炭素を取り込む力は育つ力の強い若木から壮年木が強く老年木になると衰えていくようです。
よって、50年単位で計画的に営まれる森林事業はカーボンニュートラル(カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)にも貢献する事業であると思います。
かつて南米アマゾンや東南アジアの無法伐採が環境破壊を引き起こしてしまいましたが、元に戻るまでは大変な時間と労力がかかります。
その影響は気候変動だけでなく海洋漁業や近隣の農業にも深く影響があるそうです。
2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標としてのSDGsの考え方でウッドショックを見直してみると、持続可能な林業の育成が住宅建築業だけでなく地球環境にも大切なように思います。
私たちの日本においてもSDGsの発想で林産業を振興しカーボンニュートラルに貢献できるように思います。
日本の国土の約7割は森林といわれていますが、今回のウッドショックが森林の価値を見直し更に活かす契機になればと思います。
海に囲まれて四季のある恵まれた森林国土を大切な資源として活かしていく工夫が試されると思います。
森林が荒れると気候だけでなく天然のダムとしての治水や沿岸の漁業にも影響を及ぼします。
また、循環型の森林資源の管理は木の成長育成を通じて二酸化炭素の固定化を促進し、カーボンニュートラルの実現に寄与すると思います。
そして私達のような木材を加工する側の建築会社の役割も大きくなると思います。
東濃桧のような地域に根差した高品質で美しい天然木素材、その素材を活かして魅力的な木造建築を作る技術、その技術の証とした長い業歴・歴史が必須の条件になると思います。
そのように造られる100年住み継がれていく家は、欧米のような長寿命の循環型の社会資産としての不動産の役割と共に、長期にわたる二酸化炭素の固定化機能としての役割でカーボンニュートラルにも貢献するように思います。
先日、渡邊工務店で17年前に建築いただいたお客様からお手紙を頂きました。
訳あってご自宅を売却されるにあたって、下記のような内容のお礼のお手紙でした。
当時生まれたばかりのお子様は高校生となり、現在は中学生のお子様もいらっしゃるとのことです。
新築から17年間のこの家での暮らしが、ご家族としての青春の1ページに深く刻み込まれ、仲良く幸せに暮らせた家でしたとのお礼を頂いた次第です。
また新しいオーナー様は当初は建替え予定で、新しい家を建築するご予定でお客様の敷地をご購入されたそうですが、実際に渡邊工務店の建物を見て壊すには勿体ないと、そのまま住み続けて頂くことになったとお手紙でお知らせいただきました。
渡邊工務店として有難いお言葉とエピソードを頂き感謝の念に堪えません。
社内で共有し、これからも同じようなお話を頂けるように精進していく所存です。
社長の渡辺も、こつこつとプライドを持って技術を活かし真面目に長年やってきて良かったと、専属率100%の各職方にもこのお施主様のお言葉を伝えると、感激して申しておりました。
渡邊工務店で建築した木造建物が子々孫々に引き継がれるだけでなく、社会資本としてまだ見ぬ新しいオーナーへ引き継がれていき、持続可能な社会とカーボンニュートラルな世の中の実現にお役に立てるよう願っています。
外務省のJAPAN SDGs Action PlatformにてSDGsの説明や日本政府の取り組み、そして各団体の取り組み事例が紹介されています。
各団体の中の企業取り組み事例では、渡邊工務店の取り組み事例も紹介されていますので、外務省のJAPAN SDGs Action Platformと共にご覧いただければ幸いです。
紹介事例より抜粋