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2026.01.08 /
新年に出会う神社の木
─ご神木が教えてくれる“木と生きる力”Column007: あけましておめでとうございます。渡邊工務店コラム編集部です。 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 新しい年の始まりに、神社へ足を運ぶ方も多いのではないでしょうか。皆様も初詣へ出かけられたことと思います。 境内で凛と立つ大木に、思わず背筋が伸びた経験はありませんか。 古くから日本人は、木に“神さまが宿る”と感じ、特別な思いを寄せてきました。今回は、神社の木々の話から、私たちの暮らしに寄り添う木の魅力をご紹介します。 目次 > ご神木とは──神さまの依り代としての特別な木 > 神社に多い木々──杉・檜・楠・松がつくる神域の風景 > ご神木と式年遷宮──桧の命を次代へつなぐ御神木奉迎送の現在 > 住まいに生かされる木──暮らしに取り入れる“木と生きる力” ご神木とは──神さまの依り代としての特別な木 神社でひときわ存在感を放つ大木を「ご神木」と呼びます。ご神木は単に古い木というだけではなく、降り立つ「依り代(よりしろ)」として、古くから人々に敬われてきました。 ご神木には、以下のような特徴があります。 樹齢が長く、地域の歴史を見守ってきた大木であること 人々が祈りを捧げてきた象徴であること 境内の中心に近い場所にあり、神社の「気」を整える存在であること 触れると温もりや力を感じる“生命の強さ”をまとっていること 境内に足を踏み入れたときの静けさや、清澄な空気感は、こうした大木が発する香り、湿度、光の遮り方が作用し、私たちの心を自然と整えてくれるからだといわれています。ご神木は、まさに“木の力”を象徴した存在なのです。 神社に多い木々──杉・桧・楠・松がつくる神域の風景 神社を訪れると、参道や境内に多様な木が生い茂り、静かで清らかな空気が漂っています。代表的な木は次のとおりです。 ●杉(すぎ)──まっすぐ伸びる神社の象徴 杉は神社の定番。すっと天に向かって伸びる姿が“天と地をつなぐ木”の象徴とされ、参道の両脇に並ぶ「杉並木」は神社の風景として非常に象徴的です。その清々しい香りは、参拝者の心を落ち着かせてくれます。 ●桧(ひのき)──社殿そのものを形づくる神聖な木 桧は「神に捧げる木」として全国の神社で特別視されてきました。 伊勢神宮の社殿や鳥居、棟木にも使われるように、社寺建築の最高峰を支える素材です。 桧は、香りが清らかで、水や湿気に強く、年月とともに深みある飴色に変化するという特性から、“永く神さまを祀る”場にふさわしいとされてきました。当社の家造りでも構造材に国産桧を採用している理由は、「強さ」「耐久性」「清々しい香り」という、古来から愛されてきたこの性質にあります。 ●楠(くすのき)──ご神木の代表格とも言える大樹 楠は、樹齢千年を超える巨木も多く、全国の神社でご神木に選ばれています。常緑で一年中青々とした葉を持ち、生命力の象徴とされ、人々に大きな安心感を与えます。 ●松(まつ)──縁起と清めのシンボル 「祀る(まつる)」と語源が近いともいわれ、神さまが降りる依り代として昔から信仰されてきました。参道や鳥居周辺によく植えられ、境内の“結界”を示すような役割を持っています。 これらの木々がつくる神社の空間は、光がやわらかく、静かで、香りがあり、“心を整える環境”そのもの。 木の磨き上げられた幹、葉の陰と木漏れ日、静かな風、そして木の香り――それらがあいまって、参拝する人の心を整え、祈りと静けさを生み出します。 ご神木と式年遷宮──桧の命を次代へつなぐ御神木奉迎送の現在 興味深いのは、神社の木が「過去からの贈り物」だけではなく、未来へと受け継がれていく“命の循環”の中にあることです。 たとえば、現在進行中の伊勢神宮「第63回神宮式年遷宮」。これは 20年に一度、社殿と神域を新しくし、清らかな空間を神さまに捧げる壮大な儀式です。 記憶に新しい昨年6月に、ご神木である桧の大木を選び、伐採し、各地で「奉迎送(ほうげいそう)」として運ぶ行事「御神木奉迎送」が行われ、木曽・木曽谷で選ばれた桧が岐阜・愛知・三重を経て、伊勢へと送られました。 沿道では地域住民や奉賛者による歓迎の祭りや旗振りで盛り上がり、まさに「木が神域から神域へと、人々の手でつながれていく」瞬間が地域全体で祝われました。 このように、ご神木は「ただの大木」ではなく、世代を超えて神さまを支え、地域と人をつなぐ“聖なるバトン”のような役割を果たしています。 私たちが神社で木を眺めるとき、その大木は「過去からの祈り」と「未来への願い」を内包している―そんな風に感じられるご神木の存在は、木と暮らす私たちの毎日の住まいにも、深い意味を持ってくれるように思います。 住まいに生かされる木──暮らしに取り入れる“木と生きる力” 神社の境内で感じる清々しさや、木々に包まれる安心感。それは特別な場所だから生まれるものではなく、木そのものがもつ力に由来しています。 杉や桧に触れたときのやわらかさ、ほのかな香り、光をやさしく受け止める質感。そうした木の心地よさは、住まいの中でも自然と人を落ち着かせ、家族の時間を穏やかに整えてくれます。 神社で大切にされてきた木と同じ樹種を日々の暮らしの中で使うことは、ただ素材として優れているだけでなく、“長く寄り添う安心感”や“自然とのつながり”を住まいの中にそっと宿してくれます。 当社が杉や桧などの天然木を大切に使い続けるのは、その木が持つやわらかい強さと、暮らしに寄り添う静かな豊かさを知っているからです。神社で感じるあの凛とした空気は、住まいの中でも確かに息づいています。 木と暮らすということは、ただの素材選びではなく、人と自然、人と歴史、人と心をつなぐ暮らしの在り方だと考えています。 📩 木造建築に関するご相談・お問い合わせはこちらまでどうぞ!