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2025.10.01 /
木材の色の変化を楽しむ 〜 暮らしの中の経年美 〜
Column004: こんにちは。渡邊工務店コラム編集部です。 秋の訪れとともに、木々が少しずつ色づいていくように、住まいに使われる木材も年月を重ねる中で表情を変えていきます。その移ろいは「劣化」ではなく、むしろ暮らしに豊かさを与えてくれる経年美です。 目次 > 経年変化と劣化の違い > 木が色を変える理由 > 樹種ごとの変化例 > 暮らしの中で楽しむ工夫 > 暮らしを育てる、経年美 経年変化と劣化の違い 🍂 経年変化とは 光や空気、そして日々の暮らしの中での使用によって、木材の色味や質感が少しずつ変化していく現象です。 例えば、日光に当たることで木肌が深みのある色に変わったり、手に触れることで艶が増したりと、木が「育つ」ように表情を変えていきます。これは自然な変化であり、木材が環境と調和しながら個性を帯びていく過程とも言えます。 🛠 劣化とは 一方で、劣化は木材の構造的な強度や機能が損なわれることを指します。 腐朽や割れ、反り、虫害などによって、本来の性能が失われてしまう状態です。これは放置すれば安全性や快適性に影響を及ぼすため、適切なメンテナンスや予防が必要です。 🏡 木の家づくりにおいて大切な視点 木の家をつくるうえで重要なのは、この「経年変化」と「劣化」の違いを正しく理解することです。 経年変化は、木の魅力を引き出し、暮らしに豊かさをもたらしてくれるもの。 劣化は、避けるべき課題であり、早期発見と対処が求められるものです。 この違いを見極めながら、木の持つ自然な変化を楽しむ視点を持つことで、住まいはより愛着のある空間へと育っていきます。 木が色を変える理由 紫外線や日光による酸化 木材に含まれるリグニンやタンニンなどの成分が、太陽光にさらされることで酸化し、色が濃くなったり黄変したりします。 空気や湿気との化学反応 酸素や水分と反応することで、木の表面に微細な変化が起こり、色味が変化します。特に湿度の高い環境では、変化が早まることも。 樹種ごとの特性(変化が強いもの、緩やかなもの) 例えば、チェリー材は赤みが増していく傾向があり、ウォールナットは逆に色が薄くなることがあります。変化のスピードや方向性は樹種によって異なります。 仕上げ方法の違い(オイル仕上げ、透明塗装など) ●オイル仕上げ:木の呼吸を妨げず、自然な経年変化が現れやすい。 ●透明塗装(ウレタンなど):紫外線をある程度遮断するため、色の変化が緩やかになる。 🍂 木材が「育つ」ように変化する これらの要因が複雑に絡み合い、木材は時間とともに深みや個性を帯びていきます。まるで人の肌が日々の暮らしの中で変化するように、木も環境に応じて表情を変えていくのです。 樹種ごとの変化例 🌳 樹種ごとの経年変化の味わい 木材は、樹種によって経年変化の表情が異なります。どの木も、年月を重ねることでしか得られない深みや温もりを帯びていきます。 🌞 パイン材(松系) 明るく柔らかな木肌が特徴のパイン材は、時間とともに飴色へと変化していきます。 この変化は、まるで陽だまりのようなぬくもりを空間にもたらし、素朴で親しみやすい雰囲気に。 🍒 チェリー材・ナラ材(オーク) チェリーやナラは、使い込むほどに色味が濃くなり、温かみが増していく樹種です。 特にチェリー材は赤みが深まり、ナラ材は落ち着いたブラウンへと変化し、重厚感と品格が漂います。 🌲 杉・桧 日本の伝統的な木材である杉や桧は、経年による変化が控えめながら、徐々に落ち着きを帯びていきます。 香りや肌触りの良さも相まって、静かな美しさが際立ちます。 🕰 木とともに時を重ねる どの樹種も、年月を経て初めて感じられる味わいがあります。 それは単なる色の変化ではなく、暮らしの記憶や空間の空気感と結びついた、木材ならではの“表情”です。 木の家づくりや家具選びでは、こうした変化を楽しむ視点を持つことで、より豊かな時間が育まれていきます。 暮らしの中で楽しむ工夫 木材の経年変化は、ただ時間が経つだけで起こるものではありません。 住まいの設計や日々の暮らし方によって、その表情は大きく変わります。 ここでは、木とともに暮らすためのちょっとした工夫をご紹介します。 🌞 採光や窓の配置を工夫し、変化の出方をコントロール 紫外線や日光が木材に与える影響は大きく、色味や風合いの変化に直結します。 窓の位置やサイズ、方角を工夫することで、光の入り方を調整し、木の変化を意図的にデザインすることができます。 例えば、床材に日差しが差し込むように設計すれば、時間とともに生まれる陰影が空間に深みを与えてくれます。 🎨 塗装や仕上げを用途に合わせて選ぶ 木材の仕上げ方法によって、経年変化のスピードや表情は大きく異なります。 オイル仕上げは木の呼吸を妨げず、自然な変化を楽しめる一方、透明塗装は紫外線をある程度遮断し、色の変化を緩やかにします。 使う場所や目的に応じて、仕上げを選ぶことで、木の魅力を最大限に引き出すことができます。 🧴 日々の手入れで表情を長く保つ 木材は生きている素材。乾拭きや定期的なオイル塗布など、ちょっとした手入れを続けることで、木の艶や質感を長く保つことができます。 手をかけるほどに、木は応えてくれる——そんな関係性が、暮らしに豊かさをもたらしてくれます。 ✨ 経年美は、設計や住まい方によってより引き立つ 木の変化は、設計の工夫と日々の暮らしの積み重ねによって、より美しく育っていきます。 経年美を楽しむという視点を持つことで、住まいは単なる「建物」から、「時間とともに育つ場所」へと変わっていくのです。 暮らしを育てる、経年美 木の家は「完成した瞬間が一番きれい」ではありません。時間とともに少しずつ色づき、深みを増していくからこそ、暮らしとともに成長する存在になります。 変化を恐れず、年月を重ねていくほどに愛着が増す――そんな住まいを楽しんでいただければと思います。 📩 木造建築に関するご相談・お問い合わせはこちらまでどうぞ!